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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

危険性評価試験所<日本カーリット(株)> 見学記

中国化薬株式会社 尾田博幸

1.はじめに
 平成22年7月23日(金)に爆発安全専門部会の見学会として, 日本カーリット(株)の危険性評価試験所を見学する機会を得ました。 以下に,その概要を報告します。

2.危険性評価試験について
 危険性評価試験とは,未知の物質,混合物及び物品を定められた判定試験により 爆発性効果があるかどうかを確かめることであり,さらには指定された危険性等級に 割り当てることをいいます。分類内容は大きく分けて「消防法による分類」 「国連勧告による分類」「一般的な評価」の3通りからなります。
 「消防法による分類」では,危険物の性質から第1類〜第6類に分類され, それぞれの分類等級で取扱い及び保管等の厳しい規制が定められています。 一方「国連勧告による分類」では,海上輸送を想定しての危険性分類が前提となっていますので, クラス1〜9に分類され,それぞれのクラスに対して指定の包装容器が定められます。
 よって,必要な分類判定によって試験方法が異なりますが,どちらにしても未知の物質, 混合物及び物品を扱おうとしている企業にとって,危険物評価は重要な項目であり, 安全に取扱うためには不可欠な分類基準となっています。 今回訪問しました日本カーリット(株)では昭和58年からこの危険物評価試験の受託を開始し, 平成7年に危険性評価試験所として保土ヶ谷工場から今の赤城工場に移転された歴史となっています。

3.見学会の概要
3.1 日本カーリット(株)危険性評価試験所について
 日本カーリット(株)危険性評価試験所では,現在「消防法:24試験」「国連法:23試験」 「一般試験:28試験」の計75試験の受託が可能とのことで,それ以外でも条件によって試験は可能とのことです。
 これらの分類試験を行う設備の他,実規模試験用の施設として,「密閉ピット試験室」 「屋外試験場」及び「屋内試験場」の3施設を保有し,大規模試験には通称「下段敷地」 と呼ばれる約200m×500mの広大な場所も準備されています。
 評価試験のステップとしましては,まず文献調査・計算による予測を含む「スクリーニング試験(熱分析試験)」 を実施し,次に物質に対する試験として,「爆発性の試験(感度試験・起爆試験)」「燃焼性の試験(着火性試験)」 及び「分解性・安定性の試験(圧力容器試験・貯蔵試験)」等を実施します。 そして最終段階として「実規模試験」が実施され,各分類又は等級に区分されることになります。 つまり,ある物質の評価結果を出すためには,多種類の試験が必要となり, 多くの時間と労力が費やされる分野であることが理解できます。

3.2 危険性評価試験の見学
 今回の試験見学では,以下の7試験を紹介して戴きました。(<>内使用物質)
  (1) オランダ式圧力容器試験<有機過酸化物>
  (2) BAM落つい感度試験<ペンスリット>
  (3) BAM摩擦感度試験<ペンスリット>
  (4) 時間/圧力試験<煙火組成>
  (5) Koenen(ケーネン)試験<発泡剤 DPT>
  (6) 弾動臼砲試験<ホウ酸とTNT>
  (7) 混触発火試験<ジエチルエーテル+亜塩素酸ナトリウム+硫酸>

写真1 オランダ式圧力容器試験準備作業

写真2 BAM落つい感度試験機

写真3 Koenen試験のセット状況
 (7)項以外はいずれも火薬関連の専門書では有名な試験ではありますが,実際の試験を見学するのは初めてで, BAM着火性試験や赤熱鉄皿試験で使用される珍しい規定治具の現物も見ることができ,非常に有益な見学となりました。
 (5)のKoenen試験では,容器破裂の金属破片状況で判定をする規定により, 密閉ピット内のどこに飛散したか分からない金属破片を見つかるまで探索・回収し, 慎重にその破壊状況を確認するその姿には,プロとしての品格を感じました。
 また,(7)の混触試験では,3種類の試薬瓶を同時に破損混触させ,瞬時に大きな炎が立ち上がった時は圧巻でした。 百聞は一見にしかずの言葉を改めて痛感した瞬間でした。

写真4 混触発火試験

4.おわりに
 日本カーリット(株)赤城工場は,回りを豊かな自然に囲まれ,工場内の環境はよく整備されていて, 快適な職場づくりへのレベルの高さを感じました。そして,危険性評価試験所で試験を行う担当者の方々には, 未知の物質を扱う勇敢さ,規定を忠実に遵守する緻密性及び繰返し試験を行う忍耐力を備えた人達でないと 遂行できない技能レベルの高さを感じました。
 今回,案内を担当して戴いた鈴木課長補佐を始め試験を担当して戴いた方々には,猛暑の中, 円滑な見学にご尽力戴いたことに関しまして,この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。
 また,見学会を了解戴きました日本カーリット(株)赤城工場の斉藤工場長に深謝致します。

 また,今回は偶然にも見学日と群馬県渋川市の「渋川へそ祭り」とが重なり, 見学後に貴重な祭りの雰囲気を体験できたのもいい思い出となりました。 因みに「へそ祭り」の由来は,渋川市が経緯度から見て日本列島の中心に位置するところから人間の中心 「へそ」に例えて命名したとのことです。
 呼び物は,腹に絵を描いてのユーモラスな踊り行進で,飛び入りも歓迎とのことですので, お祭り好きの方は来年是非参加をお奨めします。
 尚,本見学会の参加者は,中山(産総研),山口(旭化成ケミカルズ),枩沢,佐久間(カヤク・ジャパン), 長谷川(日油),栗原(火薬工業会),加藤(日本工機),小倉及び尾田(中国化薬)の9名でした。


写真5 今回の見学会に参加したメンバー

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