2002年度火薬学会賞-論文賞 |
「高エネルギー物質の衝撃起爆過程の数値解析的研究」 反応性物質の爆轟転移過程は,そのエネルギーを有効に利用する観点ばかりでなく,安全性の確保から考えても重要な研究課題である。反応性物質中に埋め込まれたゲージによる計測技術の進歩に伴い,爆轟転移に対する理論的な研究も進展し,現在では高性能爆薬の衝撃起爆過程の実験を精度よく再現できる反応モデルも提案されてきている。しかしながら,数値コードには,未反応物質および反応生成ガスの状態方程式,起爆モデル,混合系のモデルなどを組み込む際に,これらの情報の正確さや意味付け,実験との対応の取り方等について,常に注意深く検討せねばならない事項が多い。 久保田士郎君の衝撃起爆過程に関する研究では,従来の起爆モデルに関する研究ではあまり取り上げられなかった,未反応状態の状態式に関する問題点を,実験と数値解析がかかえる共通のものとしてとらえ,数値解析的な検討が行われている。また,衝撃起爆実験結果を基に提唱されている Single curve buildup の概念を数値実験により検証し,その概念が厳密には成立しないことを示した。さらに,反応領域圧力計算において求められるガス成分ならびに未反応成分の比体積の関係が反応率にほとんど依存しないことを見出し,理論的にも興味深い知見を与えている。この関係を起爆計算の高速化のために応用し,新しい計算手法を提案するなど,今後の起爆解析に有用な多くの研究成果を有する研究であり,論文賞に値するものである。 推薦論文 「Lee-Tarver モデルを用いた高性能爆薬の衝撃起爆過程の数値解析に関する研究」 ─ 火薬学会誌, Vol.62, No.2, 57(2001) 「高性能爆薬に関する反応領域圧力計算のモデリング(第1報)」 ─ 火薬学会誌, Vol.62, No.4, 155(2001) 「高性能爆薬の一次元衝撃起爆過程の数値解析」 ─ 火薬学会誌, Vol.63, No.1, 1(2002) 略歴
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論文賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な論文を論文誌に発表した社員に授与しています。
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