久保田浪之介君は,永年にわたり,ダブルベース推進薬,HMX推進薬,GAP推進薬などの燃焼速度特性,振動燃焼特性等に関する実験的研究を行い,固体推進薬の燃焼機構の解明に優れた研究成果を挙げてきた。また,最近ではダクテッドロケットなどの空気吸い込み式推進機関や,それに用いられるガス発生剤に関する研究を理論,実験の両面から行っている。多数の論文や固体推進薬の燃焼特性の講座・解説を発表しているが,これらは海外を含む多くの研究者の論文で引用されている。
さらに,火薬類等の高エネルギー物質の分野で,同君が所属する研究所の若手研究者のみならず,多くの研究者,技術者を育成し,指導を受けた研究者等は優れた研究や開発を行い,博士号を取得するなど活躍している。一方,火薬類等に関する啓蒙的な書物も著しており,危険な物質というイメージではなく,ロケットや花火に代表されるような有効に活用できる高エネルギー物質という側面を広く知らしめた効果は大きい。
また,火薬学会のプロペラント部会長を永く務め,プロペラント・ハンドブックの編集・発行など学会の発展に多大な貢献をしている。
以上から,久保田浪之介君の業績,活動ならびに火薬学会への貢献は顕著なものであり,学術賞に値する。
1969年 | プリンストン大学グッゲンハイム研究所 研究助手 |
1972年 | プリンストン大学大学院航空宇宙学修士課程終了(MA) |
1973年 | プリンストン大学大学院博士課程終了(航空宇宙学 Ph.D) |
1991年 | 防衛庁技術研究本部 第3研究所 第2部長(原動機) |
1994年 | 防衛庁技術研究本部 第3研究所 所長 |
1997年 | 三菱電機株式会社 顧問 |
2005年 | 旭化成ケミカルズ株式会社 顧問 |
1997年〜2003年 | アラバマ大学ロケット推進研究所 客員研究員 |
1999年〜現在 | 南京理工大学 顧問教授 |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。