近年,爆薬が発生する高エネルギーを有効利用するために,起爆方法,新規高性能爆薬の開発,爆ごう波や衝撃波の制御などが検討されている。起爆方法としては,電気雷管による点起爆,大電流を用いた金属細線爆発による起爆などが知られている。金属細線爆発を用いた爆薬の起爆は,線状の起爆や爆薬表面に平行,等間隔に配置した金属細線を一斉爆発させることで得られる平面起爆など多様な起爆への対応が可能であるため,爆ごうの指向性を制御することによって工業的な応用範囲の拡大が期待できる。
本研究では,銅パイプに充填されたPETN粉体爆薬の中心軸上もしくは中心軸からある程度偏心させた軸上に金属細線を配置し,金属細線に衝撃大電流を印加した際に起爆されたPETNの爆ごう,銅パイプの拡張を光学的観察および3次元衝撃解析プログラムを使用したシミュレーションによって評価している。その結果,銅パイプの初期拡張速度はPETNの薬厚と比例関係を示し,拡張の収束速度はPETNの爆ごうガス量および爆ごうエネルギーが銅パイプに作用した際に発生する反射波に起因することが示された。
以上の研究成果は、線爆発によって起爆されたPETN粉体爆薬の爆轟に関する知見を深めたのみならず、爆轟の金属加工工学への応用の基盤技術の確立に大きく寄与するものであり、奨励賞に値するものである。
2002年3月 | 熊本大学工学部知能生産システム工学科卒業 |
2003年4月 | 熊本大学大学院自然科学研究科機械システム科学専攻 博士前期課程 入学 |
2004年9月 | 熊本大学大学院自然科学研究科機械システム科学専攻 博士前期課程 修了 |
2004年9月 | 熊本大学大学院自然科学研究科機械システム科学専攻 博士前期課程 入学 |
2007年3月 | 熊本大学大学院自然科学研究科生産システム科学専攻 博士後期課程 修了予定 |
同 | フランス リール大学 博士課程 修了予定 |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。