固体推進薬の性能向上の一つは金属を混合することで達成してきた。
燃焼熱の大きな金属の一つであるアルミニウムが用いられてきた。
アルミニウムは燃焼室内で完全燃焼せず一部未反応のまま放出されることが知られている。
また,AP系コンポジット推進薬の酸化剤の生成物にはHClが含まれている。
これは酸性雨の原因にもなり代替酸化剤が検討されていた。
羽生宏人君はMg/Alを用いることで酸性雨及びアルミニウムの燃焼効率の向上を図ることに着目した。
Mg/Alが燃焼速度に与える影響を燃焼表面おける熱バランスの関係から求めた。
Mg/Alを混合するとAlと異なり燃焼表面近傍気相からの熱移動量を増加して燃焼速度が増加している。
このことはAlに比較して燃焼表面近傍気相における反応速度が大きいことを意味しており今後のロケットの燃焼,流れ解析にも有用である。
燃焼速度の変化はロケットモータを設計するにおいて最も重要な要素である。
これにMg/Alがどのような影響を示すか求めたことは,今後のロケットモータの設計に貢献できるものであり,技術賞に値する。
マグナリウム(Mg/Al)-AP系固体推進薬の燃焼速度特性に関する研究 - Sci. Tech. of Energetic Materials, 67, 2006, pp187-192 |
1995年3月 | 東京理科大学理学部T部応用化学科卒業 |
1998年3月 | 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了 |
2002年3月 | 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程修了 |
2002年4月 | 文部省宇宙科学研究所 宇宙推進研究系推進燃料工学部門 入所 |
2003年10月 | 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 |
宇宙輸送工学研究系 助手 | |
2004年4月 | 東京大学大学院工学系研究科 化学システム工学専攻 併任助手 |
2006年4月 | 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 |
宇宙科学プログラムSE室 配属(兼務) | |
2007年4月 | 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙基幹システム本部 |
固体ロケット研究チーム配属 主任開発員 | |
同年 | 宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究系 助教兼務 |
現在に至る |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。