永石俊幸君は,永年に亘り,燃焼・爆発現象,火薬・爆薬類の反応性,
火薬類や高エネルギー物質の静電気感度および火薬類の廃棄物処理等の研究を行い,
多数の論文を発表するなど優れた研究成果を挙げてきた。
火薬学の研究に取り組むきっかけになったのは,九州工業大学長田研究室であり,
その後直ちに東京大学大学院工学研究科燃料工学科疋田研究室に進学したことである。
当時疋田研究室は,爆轟反応の理論と実験的研究の両面で世界の最先端を行く成果を上げており,
氏は水素一酸素あるいはメタンー酸素混合物を用いての「気体爆轟の構造」の研究で学位を得ている。
疋田研究室の爆轟反応の実験的部分の研究を引き継ぐ機関はなく,
以後この分野での研究は日本では殆ど行われておらず,氏は実験を経験した研究者のごく小数の一人である。
特に,水素燃料の社会の実現が叫ばれている昨今,この分野での研究経験を持つ氏は貴重な存在でもある。
昭和46年に九州産業大学に奉職ののちの初期には火工品組成物の着火や燃焼反応の研究を行い,
多数の優れた論文を発表した。この功績に対して昭和53年度工業火薬協会論文賞(「火工品の基礎研究」)を得ている。
そののち引き続いて火工品組成物や高エネルギー物質の静電気感度や鉛フリーの発音剤など
新規煙火組成物の開発等に関する研究を行っている。
近年は,ガス発生剤や発煙しない組成物として黒色火薬の代替品に期待されるPOM系燃料,
静的破砕剤として用いる酸化カルシウムの基礎的反応,ニトロ化合物を含む廃水の処理,
硝酸イオンを含む廃水の環境に優しい処理等の研究で顕著な成果を挙げている。
これらの研究はいずれも時代の要請を先取りするものでその実用化が期待されている。
九州産業大学での火薬類を含む高エネルギー物質関連の研究環境は,故吉永俊一先生以来,
古賀道生准教授,佐野洋一副手等のスタッフの協力の下,ますます充実してきており,今後の発展が期待されている。
また,卒論や修論で火薬類の研究をした学生は400数十名にのぼり,上述の研究テーマでの学位取得者も5名となっている。
以上から,永石俊幸君の研究業績,火薬学会への貢献および火薬関係の後継者の育成等への貢献は顕著なものであり,
学術賞に値する。
1966年3月 | 九州工業大学工業化学科卒業 |
1966年4月 | 東京大学大学院工学研究科燃料工学専攻修士課程入学 |
1968年3月 | 東京大学大学院工学研究科燃料工学専攻修士課程終了 |
1968年4月 | 東京大学大学院工学研究科燃料工学専攻博士課程入学 |
1971年3月 | 東京大学大学院工学研究科燃料工学専攻博士課程終了 |
工学博士(東京大学) | |
1971年4月 | 九州産業大学工学部講師 |
1972年4月 | 九州産業大学工学部助教授 |
1986年4月 | 九州産業大学工学部教授 |
現在に至る |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。