田村昌三君は,東京大学において「硝酸酸化とニトロ化に関する研究」で工学博士の学位を取得,その後,
東京大学,横浜国立大学において,火薬類等エネルギー物質科学の基礎となる窒素酸化物の反応化学,
火薬類等エネルギー物質のエネルギー発生挙動や反応挙動の解析,煙火の燃焼挙動と発色機構の解明,
新規ガス発生剤の開発等のエネルギー物質化学,エネルギー発生制御としての安全の科学に関する教育と研究を行い,
38人(17人主査)の工学博士をはじめ,多数の有能な人材の育成に努めるとともに,その成果を47編の主要な著書,
6編の訳書,284編の研究論文,128編の解説等に発表し,この分野の研究およびその成果の普及に貢献した。
1987年,「タイムプレッシャー法に関する研究」で,工業火薬協会論文賞を受賞している。
また,社団法人火薬学会においては,永年にわたり工業火薬協会誌,
火薬学会誌(現Science and Technology of Energetic Materials誌),EXPLOSION誌の編集委員長として,
研究成果の公表および情報交換の場としての充実に努めるとともに,国際化対応委員会委員長,
環境安全委員会委員長を歴任し,また,理事,会長として,学会,産業界,官界等の協調体制をはかり,
ISEM開催等による国際化を図り,環境安全に配慮しつつ,学会の発展に努めた。2006年,名誉会員となり,
最近では,火薬学会発行の「エネルギー物質ハンドブック」の監修を務め,また,
火薬学会と日本火薬工業会との共同による将来構想懇談会の委員長を務めた。
一方,総合資源エネルギー調査会高圧ガス及び火薬類保安分科会長,火薬部会長等を歴任し,また,
社団法人全国火薬保安協会副会長をはじめ,多くの関係団体において,豊かな学識経験を基に,
火薬類の保安技術の確立,保安基準の作成,事故調査等を行い,保安行政の推進に多大の貢献をするとともに,
OECD-1GUS会議への出席,日本での国際会議開催等により,火薬類等エネルギー物質規制の国際整合化,
安全技術の情報交換に努める等,我が国の国際化の進展に尽力した。これらの貢献により,
2000年に通商産業大臣表彰,2005年に内閣総理大臣表彰を受賞している。
以上から,田村昌三君の火薬等エネルギー物質分野における研究業績と人材育成,火薬学会への貢献,
社会貢献には顕著なものがあり,学術賞に値する。
1964年 | 東京大学工学部燃料工学科卒業 |
1966年 | 東京大学大学院工学系研究科燃料工学専門課程修士課程修了 |
1969年 | 同博士課程修了,工学博士 |
1969年 | 東洋紡績株式会社入社 |
1977年 | 東京大学工学部反応化学科講師 |
1980年 | 同助教授 |
1990年 | 同教授 |
1994年 | 東京大学工学部化学システム工学科教授 |
1995年 | 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻教授 |
1999年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻教授 |
2004年 | 同定年退官,東京大学名誉教授 |
横浜国立大学安心・安全の科学研究教育センター客員教授 | |
2005年 | 同教授 |
2009年 | 同 任期満了による退職 |
同 客員教授 | |
現在に至る |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。