ロケットの用途が多様化するのにともなって,さまざまな性能を持つ推進薬が必要とされている。
そこで,酸化剤,バインダー,燃焼触媒,
高エネルギー可塑剤などが推進薬の機械的特性や燃焼特性に及ぼす影響についての研究が行われている。
高エネルギー可塑剤は推進薬の高性能化に有効であるが,高価である。そこで,
甲賀 誠君はポリテトラヒドロフラン(PTHF)に注目した。PTHFはゴム製品の原料として,
さまざまな分子量の試料が大量生産されており,安価に入手できる。
推進薬バインダとして最も広く使用されている末端水酸基ポリブタジエン(HTPB)の構造と比較して,
PTHFの構造には不飽和結合がなく,繰り返し単位中に酸素を含んでいるだけでなく,
PTHFの構造がHTPBのそれと似ている。そのため,HTPBとPTHFは均一に混合しやすいだけでなく,
化学的に安定であり,燃焼特性も向上できると考えた。本研究では,PTHFを可塑剤として添加することによって,
HTPB系推進薬の機械的特性や燃焼特性を改善できることを見出した。これらに研究成果は,
推進薬の高性能化だけでなく,コスト削減にも貢献できるものであり,技術賞に値する。
1987年3月 | 防衛大学枚本科応用化学科卒業 |
1993年3月 | 防衛大学校理工学研究科材料工学専門噴進材料系列卒業 |
1994年3月 | 防衛大学校助手 |
1999年9月 | 博士(工学)(慶応義塾大学) |
1999年10月 | 防衛大学校講師 |
2001年7月 | 米国The University of Alabama in Huntsville, Propulsion Research Center客員研究員(〜2002年9月) |
2003年4月 | 防衛大学校准教授 |
現在に至る |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。