硝酸アンモニウム(AN)は,安価かつ残渣生成のないエネルギー物質酸化剤である事から,
自動車エアバッグ用ガス発生剤分野および宇宙ロケット用固体推進薬分野での応用が広く期待されている。
しかしながら,実用拡大にはAN固有の特性である,燃焼性の乏しさ,固相間相転移,
吸湿性等の改善が不可欠と考えられている。
和田祐典君は,ANを酸化剤主成分としたガス発生剤モデル試料について,種々の燃焼特性評価を実施し,
ANの燃焼機構に関する定性的な考察とそれに基づく燃焼モデルの提案を行った。より具体的には,
硝酸グアニジン,AN,塩基性硝酸銅からなるガス発生剤試料の線燃焼速度解析と燃焼波内温度場測定の結果から,
AN含有割合が線燃焼速度の圧力指数の変化に大きな影響を及ぼし,
かつ圧力指数が燃焼波の予熱帯におけるAN由来アンモニアの消費則と相関する燃焼反応モデルの提案である。
また,硝酸銅,硝酸カルシウムをANと複塩化することによる,
圧力発生挙動の向上効果とANの相安定化効果についても検討,評価を実施した。
これらの研究成果は,ANの火工品分野における応用拡大に寄与し得る貴重な検討結果であり,
今後の発展が期待出来る事から,奨励賞に推薦する。
2004年3月 | 東京大学工学部化学システム工学科卒業 |
2006年9月 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻修士課程修了 |
2009年9月 | 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程単位取得退学 |
2009年9月 | 独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門テクニカルスタッフ |
2010年3月 | 博士(工学)(東京大学) |
2010年4月 | 独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門特別研究員 |
現在に至る |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。