物体を短時間のうちに加速して高速で飛翔させるための加速装置として,
固体発射薬を用いたバリスティックレンジや火砲が挙げられる。
砲内弾道解析はこういった飛翔体加速装置の設計の際に用いられる数値計算である。
固体発射薬の燃焼場はガスと固体火薬が混在する複雑な混相流現象となるが,
計算機の進歩に伴う数値流体力学の発展により,砲内弾道解析における計算モデルの詳細化,
および,予測性能の向上が期待されている。
三浦啓晶君は,固体発射薬を用いた飛翔体加速装置薬室内部における燃焼過程をシミュレートするため,
多次元の固気二相燃焼流計算コードを開発し数値計算を行った。
シミュレーションにより複雑な砲内現象の再現と可視化による現象把握を実現し,
多次元の固気二相燃焼流計算手法の有効性を示した。
また,砲内弾道シミュレーションを用いた数値実験を行い,
固体発射薬の初期温度条件が砲内現象に与える影響に関して検討を行った。
着火に要するエネルギーおよび燃焼エネルギー供給速度と,
薬室内を伝播する燃焼波特性の関係について注目し,解析結果を用いて考察がなされている。
以上の研究成果は,火薬の効率的で安全な利用のための数値シミュレーション技術の進展に寄与するものであり,
今後の発展が期待できることから奨励賞に推薦する。
平成17年3月 | 慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業 |
平成19年3月 | 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了 |
平成20年4月 | 慶應義塾大学理工学部 助教 |
平成22年3月 | 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了 |
平成23年4月 | 防衛省技術研究本部 任期付研究員 |
現在に至る |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。