小川輝繁君は,「火薬類の爆発にもとづく水中圧力波の性状ならびに水中圧力波が魚類に及ぼす影響に関する研究」で京都大学において工学博士の学位を取得されたほか,京都大学および横浜国立大学において,発破,発破による環境問題,含水爆薬の力学特性,煙火組成物の発火危険性と威力評価,硝安およびANFO の感度と爆発特性などの研究に優れた成果を上げ,「水中爆破に関する研究」で社団法人火薬学会論文賞を受賞している。
この間,火薬類の爆発にもとづく水中圧力波の性状ならびに水中圧力波が魚類に及ぼす影響に関する研究,広範かつ時代を先取りした研究に取り組んできた成果は,25編の著書や150編を超える研究論文,および30編以上の総説・解説として発表され,多くの科学者・技術者に引用され,わが国における化学物質や技術システムの発展に大きく貢献した。
また,人材育成にも積極的に努力し,包容力のある人柄で学生を指導するとともに,数多くの修士や博士を輩出した。門下生には国内外の大学教員をはじめ,国・自治体の研究機関や行政および民間企業で活躍する者も多い。
社団法人火薬学会においては,発破専門部会長として海外発破技術を調査し,海外発破技術者との交流を深めた。また,工業火薬協会誌,火薬学会誌,EXPLOSION 誌の編集長として,研究成果の公表及び情報交換の場としての充実に努めるとともに,理事,会長として,学会,産業界,官界等の協調体制をはかり,ISEM 開催等による国際化を図り学会の発展に努めた。
一方,大学での研究成果を社会に還元することの重要性を実践し,民間企業との多数の共同研究を実施するとともに,日本学術会議,火薬学会,安全工学会を始めとする多数の学会の要職を務めて学術の振興に貢献してきた。また,経済産業省,内閣府をはじめとする多くの行政の審議会,委員会に参画し,第一線の専門家としての技術指導や政策提言を行い,特にわが国の火薬保安活動に貢献した功労者に贈られる経済産業大臣表彰も受賞した。
以上のように,小川輝繁君は,40数年間の永きにわたり,火薬等エネルギー物質分野における研究業績と人材育成,火薬学会への貢献,及び社会貢献には顕著なものがあり,火薬学会学術賞に値する。
1966年 | 京都大学工学部鉱山学科卒業 |
1967年 | 京都大学大学院工学研究科資源工学専攻修士課程 |
1968年 | 横浜国立大学工学部助手 |
1978年 | 同講師 |
1981年 | 同助教授 |
1989年 | 同教授 |
2006年 | 同大学院環境情報研究院教授 |
2008年 | 同 定年退職 横浜国立大学名誉教授 |
財団法人 総合安全工学研究所 専務理事 | |
現在に至る |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。