伊東繁君は,九州大学大学院で修士号を取得された後,博士論文「衝撃波の反射に関する研究」により東京工業大学より工学博士学位を取得された。その後も衝撃波の基礎と応用に関する研究を長年実施され,多くの研究成果を挙げている。博士学位取得当初から衝撃波の基礎現象の解明に長年取り組んでこられ,熊本大学着任後には衝撃波を利用する材料加工技術開発に代表される応用面での研究に多くの成果を挙げている。その内容は,板材の爆発成形,爆発圧着・粉末成形,衝撃合成といった材料科学から,木材の衝撃処理・改質の他,最近では食品加工技術開発まで,広範な分野に及んでおり,1995年には「水中衝撃波に関する研究」により火薬学会論文賞,2006年には米国機械学会PVPDのConference Awardを受賞されるなど,多くの受賞実績を有している。これらの研究業績は,それぞれの分野で高く評価されており,その研究成果は7編の著書や,135編の研究論文,10編の総説,解説等として発表され,多くの研究者,技術者に引用され,我が国の爆発,衝撃波研究の発展に寄与してきた。また,これらの研究を推進することを通じて,多くの学生を輩出し,本学会ならびに周辺分野において活躍する研究者・技術者の育成にも多大な貢献をされている。
火薬学会においては,理事,評議員を長年務められた他,爆発衝撃加工専門部会の立ち上げと運営にも尽力されてきた。また熊本大学を中心に,爆発・衝撃波・高エネルギー反応に関する国際シンポジウム(ESHP)を主宰する等,当該分野の研究交流を推進し,国内外の学術組織の役員を歴任してきた。一方で,同君が開発した食品加工用の「爆破レンジ」は度々マスコミに登場し,研究成果の実用化と普及に努めている。現在は沖縄工業高等専門学校の校長として多忙を極める一方で,「爆破レンジ」を用いた研究プロジェクトを沖縄高専に根付かせようと尽力されている。
以上のように,伊東繁君は,30数年の永きにわたり,火薬類,衝撃波分野における研究業績と人材育成,火薬学会ならびに社会貢献には顕著なものがあり,火薬学会学術賞に値する。
1971年3月 | 九州大学大学院工学研究科修士課程機械工学専攻修了 |
1971年4月 | 九州産業大学工学部助手 |
1976年4月 | 九州産業大学工学部講師 |
1979年4月 | 九州産業大学工学部助教授 |
1981年5月 | 工学博士(東京工業大学) |
1984年4月 | 株式会社ワコー 企画開発部主任研究員 |
1990年9月 | 熊本大学工学部講師 |
1993年7月 | 熊本大学工学部助教授 |
1999年7月 | 熊本大学衝撃・極限環境研究センター教授 |
2003年4月 | 熊本大学衝撃・極限環境研究センター長 |
2010年4月 | 沖縄工業高等専門学校 校長 |
2010年5月 | 熊本大学名誉教授 |
現在に至る |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。