火薬類をはじめとする反応性物質は,その含有されたエネルギーを解放することにより種々の効果を得るとともに,その反応性の高さから反応促進剤などに利用され,工業的に有用である一方,潜在的に発火・爆発の危険性を有しており,発火・爆発事故を予防するためにはそれらの潜在危険性評価が不可欠である。しかし,これらの試験法は大量の試料を必要とするものが多く,少量の試料での試験で精度良く危険性が予測できる新たな評価法を開発することが求められている。
佐藤嘉彦君は,自己反応性物質の爆発性を安全に予測することを目的として,断熱熱量計 (ARC) の測定結果と伝爆性試験の結果を比較し,ARC測定による爆発性予測の可能性の検討を行った。その結果,自己反応性物質の爆発性の予測にARCによる圧力測定が有用であることを示した。また,既存の威力評価試験法では評価が困難であった自然発火性物質の混触反応により,鋼管が破壊されることを実証するとともに,生成ガスによる鋼管内圧力と鋼管耐圧の推算および試験結果との比較検討の結果,自然発火性物質の反応危険性評価についての適切な試験条件を明らかにした。
これらの研究成果は,反応性物質の潜在エネルギー危険性評価法を高度化するための基礎となるもので,様々な反応性物質に起因する発火・爆発事故の未然防止に寄与するものであり,技術賞に値する。
1994年3月 | 名古屋大学理学部化学科 卒業 |
1996年3月 | 名古屋大学大学院工学研究科原子核工学専攻博士前期課程 修了 |
1996年4月 | 動力炉・核燃料開発事業団 入社 |
2006年6月 | 千代田アドバンスト・ソリューションズ株式会社 入社 |
2007年6月 | 独立行政法人産業技術総合研究所爆発安全研究コア 入所 |
2011年9月 | 横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻 |
博士課程後期修了 博士(工学) | |
2013年4月 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所化学安全研究グループ 入所 |
現在に至る |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。