火薬類および可燃性ガスに代表されるエネルギー物質は、何らかの原因で反応現象が始まると制御が困難となり爆発的な反応が起こり、周辺へ大きな被害を与えることがある。このため、火薬類や可燃性ガスを製造および貯蔵施設等では、安全な保安距離を確保する必要がある。
Dongjoom Kim君の研究は、可燃性ガスとしてメタンと酸素の混合気体の爆発現象の解明と発生した爆炎および爆風圧の伝播特性を明らかにした。メタンガスは、都市ガスとして広く普及しているが、液化して液体メタンとて液体酸素と混合して使用することで、次世代のロケット用燃料しても注目されているエネルギー物質である。また、火薬庫の安全性の評価に関する研究では、新しいタイプの火薬庫について小規模モデルを用いた実験を行い、発生する爆風圧の伝播特性を明らかにした。新しいタイプの火薬庫は、岩盤等に円筒状の空間を掘削して火薬庫を設置することで、爆発時に放爆方向が入口方向に限定される。このため従来の火薬庫と比較して保安距離等を短くすることが可能であり、保安物件との保安距離の確保が困難な場所での設置が期待されている。さらに、基礎的研究として電気起爆については最小着火エネルギーに関する実験と数値解析を行い、理論的な考察を行った。
これらの研究成果は、エネルギー物質の爆発影響を評価する上で基礎的な研究データであり、次世代のロケット用燃料の研究開発あるいは新しいタイプの火薬庫の安全性評価に寄与するものであり、火薬学会賞論文賞に値する。
1997年8月 | 国立ソウル産業大学安全工学科卒業 |
2004年3月 | 横浜国立大学大学院工学府物質エネルギ−安全工学コース |
博士前期・後期課程修了、工学博士 | |
2004年4月 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
爆発安全研究センター産総研特別研究員 | |
2004年9月-2006年8月 | 独立行政法人日本学術振興会(JSPS) 外国人特別研究員 |
2012年 | ソウル科学技術大学安全工学科安全科学研究所 先任研究員 |
現在に至る |
論文賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な論文を論文誌に発表した社員に授与しています。