加藤幸夫君は,フランスのポワチエ大学機械航空高等工科大学において「ニトロメタンとアルミニウム粒子の混合物中を伝播する爆轟波の研究」で工学博士号を取得された。その後,ポルトガルのクインブラ大学,福井工業大学での教員時代および日本油脂(株)(現在の日油(株)),日本工機(株)における研究開発者としての経歴を通して,一貫して火薬類の爆轟現象の実験的研究を行ってきている。この分野での研究は日本では殆ど行われておらず,同君は多岐に亘る実験を経験したごく少数の研究者の一人であり,貴重な存在である。
爆轟現象の研究に関しては,爆轟波の温度測定や圧力測定,水中爆発現象の計測,爆轟波におけるアルミニウム粒子の反応等,常に時代の最先端の研究を展開し,その成果を火薬学会のみならずデトネーションシンポジウム等の海外の学会に多数投稿し,100 編を超える研究論文を発表している。これらの論文は海外を含む多くの研究者の論文で引用されている。
また,同君が所属する企業の若手研究者の指導・育成を行うと同時に博士号の取得を積極的に推奨し,指導を受けた研究者より多くの学位取得者を輩出しており,火薬業界の技術レベルの向上に大きく貢献している。
同君は,長年火薬学会の編集委員として火薬学会誌のレベルの向上に寄与すると共に,多くの大学の気体爆轟の研究者へ火薬学会への参加を呼びかけ,火薬学会の活動領域の拡大と活性化に多大の貢献をしている。
以上から,加藤幸夫君の業績,活動ならびに火薬学会への貢献は顕著なものであり,学術賞に値する。
1972年3月 | 名古屋大学工学部航空学科卒 |
1978年3月 | ポワチエ大学機械航空高等工科大学にて工学博士号取得 |
1978年10月 | クインブラ大学理工学部機械工学科助教授 |
1980年9月 | 福井工業大学環境安全工学科講師 |
1984年4月 | 日本油脂(株)化薬事業部 |
1994年7月 | 同上 研究開発部長 |
1998年7月 | 同上 開発営業部長 |
2000年8月 | 同上 研究開発部長 |
2002年9月 | 同上 技術部長 |
2005年6月 | 日本工機(株)取締役 |
2010年6月 | 同上 常務取締役 |
2012年6月 | 同上 顧問 |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。