永山邦仁君は,九州大学において「固体中の求心衝撃波の伝播と超高圧状態到達に関する理論的研究」で博士号を取得された。学位号取得後は,熊本大学付属衝撃エネルギ実験所に奉職され,火薬類の爆発現象解明・応用に関する研究で多くの卒業・修士論文を指導した。1970年代の後半から火薬学会のみならず,凝縮系の衝撃現象に関する著名な国際誌に多くの論文を発表した。この間,爆轟誘起衝撃波の収束による超強磁場発生法の研究が代表的なものの1つである。その後,九州大学へ移り,1980年代〜90 年代は,粉体・多孔物質中の圧力波に関する研究,凝縮媒体中の衝撃波, 高分子材料の衝撃圧縮特性など火薬学とも関係が深い衝撃圧縮現象ならびに応用に関する研究を実施した。その間,ロングパルスレーザーを自作して,高圧ガス衝撃銃とともに用いる精密レーザー計測技術,超高速度流しホログラム撮影システムなど,高速現象の解明で重要となる測定技術を開発した。さらに2000年代は主に高エネルギー物質のレーザー起爆を航空宇宙工学へ応用する研究を展開した。その研究は米国サンディア,ロスアラモス,ローレンスリバモア国立研究所における同分野の研究者に注目を集めた。同君の指導により,研究室の学生も International Pyrotechnic Seminar で FrankCarver Bursary賞を受賞している。同時に研究室から多くの学生を火薬学会で発表させ,Science and Technology of Energetic Materials 誌への投稿まで結び付け,さらには火薬学会の若手・中堅研究者に対しても凝縮相の状態式や衝撃現象評価法などを指導した。自らも Science and Technology of Energetic MaterialsへGrüneisen 型状態式などの研究成果を発信して,論文誌の質の向上に貢献した。最近では他に類のないような起爆や爆轟生成ガス関連分野の研究者必見の Grüneisen 型状態式に関する教科書的な本も出版されている。火薬学会が主催する計算機火薬学講座などでも講師を務め,火薬学会員の教育活動も積極的に実施した。上記の実績から永山邦仁君が火薬学会の発展に顕著な実績があり,学術賞に値する。
1969年3月 | 九州大学理学部物理学科卒業 |
1971年3月 | 九州大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程修了 |
1974年3月 | 同上博士後期課程単位取得の上退学 |
1974年4月 | 熊本大学助手(工学部) |
1978年2月 | 同上 講師 |
1981年5月 | 同上 助教授 |
1984年10月 | 九州大学助教授(工学部) |
1995年12月 | 同上 教授(工学部) |
2002年4月 | 同上 教授(大学院工学研究院) |
2010年3月 | 同上 定年退職 |
2010年5月 | 同上 名誉教授 |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。