田中茂君は、流動パラフィン中に設置した直径0.5mm長さ180mmのタングステン細線を10kJの衝撃大電流で爆発させることにより炭化タングステンのナノ粉末を合成し、その組成、構造、粒子形状を分析している。この研究成果を研究論文としてScience and Technology of Energetic Materials誌に発表している。
PMMA製の透明な容器を用いることでタングステン細線の爆発現象をハイスピードビデオカメラで可視化し電流波形との整合性を明らかにしている。回収された粉末はX線回折や電子顕微鏡により構造解析が行われ、超電導を示すとされる立方晶で、大きなひずみを有していることを明らかにしている。粒子形状にも特徴があり、球形で双晶構造のものと電極材料の銅とタングステンがコアシェル構造を示す粒子も確認されている。
田中茂君の研究は、金属炭化物合成の新たな手法として、爆発現象の一つである金属細線の衝撃大電流による爆発を利用している点がユニークであり、今後の発展が期待されるナノ粉末が得られていることも評価に値する。この研究成果は、火薬業界の今後の発展に寄与するものであり、よって、火薬学会技術賞に値する。
2002年3月 | 熊本大学知能生産システム工学科卒業 |
2004年4月 | 熊本大学工学部技術部 技術職員 |
2005年3月 | 熊本大学自然科学研究科機械システム専攻 博士前期課程修了 |
2009年3月 | 熊本大学自然科学研究科生産システム科学 博士後期課程修了 |
2016年4月 | 熊本大学パルスパワー科学研究所 助教 |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。