西野佳奈君は、全長6cmのポリカーボネート製パイプ中にC4爆薬と六号雷管を配置したデバイスを用い、厚さ15cmの鉄筋コンクリート壁に人命救出用の穴を開ける技術を開発した。装薬の量・装てんの深さと、発破後にできるクレーター深さの関係を鋭意研究し、壁の反対側に破砕片を飛散させないような最適なクリーン発破の条件を導き出している。また、デバイスの装てん位置(装てん深さ)により破砕の程度をコントロールし、かつ、ハイスピードカメラを用いた破壊プロセス観察により、破片の破壊・飛翔プロセスを明らかにした。その成果を以下の論文としてScience and Technology of Energetic Materials誌に発表している。
一般的に地震などの被災を受けた地域では、瓦礫に閉じ込められた被災者を救助するための電気も無く重機も持ち込めないのが普通である。このような初期救助現場において、救命隊員が携帯できる小さな発破デバイス、発破器とハンドドリルがあれば、コンクリート壁に救出用の穴を設けられるこの手法は、救助手法の選択肢を増やし、我が国だけでなく地震国全てに心強い基礎技術となる。
西野君の一連の発破技術開発成果は高く評価され、当学会に大きく貢献するものであり、火薬学会奨励賞に値するものである。
2009年3月 | 横浜市立大学国際総合科学部国際科学科卒業 |
2010年4月 | 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科ナノシステム科学専攻博士前期課程入学 |
2010年10月 | 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻特別研究学生 |
2012年3月 | 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科ナノシステム科学専攻博士前期課程修了 |
2013年10月 | 横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻博士課程後期入学 |
2014年5月 | 独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門リサーチアシスタント |
2017年3月 | 横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻博士課程後期修了 博士(工学) |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。