論文賞
杉山 勇太 君, 若林 邦彦 君, 松村 知治 君, 中山 良男 君
「地中式火薬庫爆発による爆風の角度指向性に関する実験と数値解析」
杉山勇太君,若林邦彦君,松村知治君および中山良男君は,高エネルギー物質の爆発影響評価において爆風に注目した研究を行っており,得られた成果は火薬類取締法の技術基準の作成などに活用されている。その過程で得られた研究成果として,地中式火薬庫モデル内の爆発で生じた爆風の角度指向特性を2016─2017 年中にScience and Technology of Energetic Materials 誌にて3 報発表した。
地中式火薬庫モデルとして円管形状を想定し,火薬庫出口近傍への土堤モデル設置有無の影響を検討した。その結果,火薬庫周囲爆風圧の出口基準方位角依存性を確認し,土堤を設置した場合には土堤で反射することによって異なる爆風圧分布になることを示した。また,円管形状の長さ/直径比を変動させた場合には,長さ/直径比が大きくなるほど爆風圧が小さくなることを示した。一方,土堤の有無,爆発実験で使用した地形の影響を考慮した爆風圧の実験式を提案し,方位角の関数として表すことができることを示した。さらに,爆発実験を再現する数値解析を実施し,爆風圧分布は爆発実験とよく一致するとともに,土堤がある場合には爆発生成ガスが土堤周辺に止まることが分かった。加えて,爆風の最大過圧等圧線は楕円で表現でき,その楕円の方程式は地表面爆発時の等圧線半径の一次関数として表すことができることを示した。
杉山勇太君,若林邦彦君,松村知治君および中山良男君の研究は,地中式火薬庫爆発時の爆風の角度指向性,形状によって地中式火薬庫周囲の保安距離が変わる可能性,地上式火薬庫保安距離の地中式火薬庫保安距離への変換可能性等,火薬類取締法の技術基準に影響を与えるものであり,今後の発展が期待される。この研究成果は高く評価され,火薬業界の発展に寄与するものであり,火薬学会論文賞に値するものである。
推薦論文
- On the azimuth angle characteristics of the blast wave from an underground magazine model( I)─Experiment with a magazine of small ratio of the length to the inner diameter─, Vol. 77, No.6, pp. 136─141( 2016)
- On the azimuth angle characteristics of the blast wave from an underground magazine mode(l II)─Numerical simulation of a magazine with a small internal length-to-diameter ratio─, Vol. 78, No.2, pp. 49─54( 2017)
- On the azimuth angle characteristics of the blast wave from an underground magazine model( III)─Experiments on the effect of the internal length-to-diameter ratio─, Vol. 78, No.5, pp. 117─123( 2017)
杉山 勇太 略歴
2008年3月 |
慶應義塾大学大学理工学部機械工学科 卒業 |
2010年3月 |
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 前期博士課程修了 |
2013年3月 |
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 後期博士課程修了 |
2013年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所(現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所) 研究員 |
2017年10月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員 |
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現在に至る |
若林 邦彦 略歴
1996年3月 |
東京理科大学理工学部物理学科 卒業 |
1998年3月 |
東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程材料科学専攻 修了 |
2001年3月 |
東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程物質科学創造専攻 修了 |
2001年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所(現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所)特別研究員 |
2003年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所 研究員 |
2014年2月 |
独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究員 |
2016年2月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 研究グループ長 |
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現在に至る |
松村 知治 略歴
1988年3月 |
室蘭工業大学工学部産業機械工学科 卒業 |
1990年3月 |
東北大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程機械工学第U専攻 修了 |
1993年3月 |
東北大学大学院工学研究科博士課程後期3年の課程機械工学専攻 修了 |
1994年1月 |
科学技術庁無機材質研究所 COE特別研究員 |
1994年4月 |
通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所(現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所) 研究官 |
2001年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究員 |
2015年4月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員 |
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現在に至る |
中山 良男 略歴
1979年3月 |
東京農工大学工学部機械工学科 卒業 |
1981年3月 |
東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程 修了 |
1985年3月 |
東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程 満期退学(同年,工学博士) |
1985年4月 |
通商産業省工業技術院化学技術研究所(現在の国立研究開発法人産業技術総合研究所) 研究官 |
1995年4月 |
通商産業省工業技術院化学技術研究所 主任研究官 |
2003年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所 研究チーム長 |
2007年4月 |
独立行政法人産業技術総合研究所 研究グループ長 |
2015年4月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 研究主幹 |
2016年11月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 総括主幹 |
2017年3月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 定年退職 |
2017年4月 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 テクニカルスタッフ |
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現在に至る |
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