西脇洋佑君は,水分が火工品の劣化に与える影響について詳細な研究を実施し,それらの研究結果を研究論文としてScience and Technology of Energetic Materials 誌に発表している。
水分による火工品の劣化は,現象としては幅広く知られているものの,その詳細は依然として不明なところが多い。西脇洋佑君は,湿度環境下における加速度試験手法を構築した上で,点滅剤組成(過塩素酸アンモニウム/マグネシウム系)を対象に湿度環境下における劣化挙動について検討を行った。Study of the hygroscopic deterioration of ammonium perchlorate/magnesium mixture では,臨界湿度というパラメーターを導入した上で劣化挙動の予測に必要な係数の決定を行った。また,Effect of deterioration products in moisture on the thermal behavior of ammonium perchlorate /magnesium mixture では,劣化組成物の分析からパフォーマンスに対する影響や劣化対策の開発につながる検討を行った。
西脇洋佑君の研究は,水分による劣化とその危険性について過塩素酸アンモニウムについて得られた知見をもとに,幅広い組成に応用可能な理論と手法の考案に資する検討を行っている。その手法は,臨界湿度を有する塩を含む混合火薬に広く応用可能であると考えられ,価値は高い。
西脇洋佑君は本賞対象研究論文の他に,硝酸グアニジン/塩基性硝酸銅の組み合わせに対する研究成果をScience and Technology of Energetic Materials 誌に発表しており,その積極性は高く評価される。将来性もあり,火薬学会への今後の大きな貢献を期待できる。火薬学会奨励賞に値するものである。
2015年3月 | 横浜国立大学理工学部化学・生命系学科卒業 |
2017年3月 | 横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻博士課程 前期修了 |
2020年3月 | 横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻博士課程 後期修了 |
2020年3月 | 博士(工学)取得 |
2020年4月 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所任期付研究員 |
現在に至る |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。