内田亘紀君らは,無線給電技術と無線通信技術により結線作業を不要にしたトンネル用無線電子雷管「ウインデット®」とこれを用いる無線起爆システム「ウインデット® システム」を開発し,その有効性を鉱山の坑道発破試験で実証した。これらの研究成果を新技術紹介としてExplosion 誌に発表している。
発破によるトンネル掘削作業は危険性が高く,過去から様々な安全化が進められてきた。古くは爆薬の鈍感化(含水爆薬化)や雷管の耐静電気化や非電気起爆化が導入された。最近では装填時の切羽近接作業を回避するため,爆薬の装填機械が開発され普及が始まっている。しかしながら,依然として雷管の結線作業は切羽に密着して行
わねばならず,無線雷管の実用化による解決が期待されていた。
そこで内田亘紀君らは,電磁誘導方式により装填孔内の雷管に無線で給電するとともに,無線通信により雷管のシステム異常の有無確認,起爆秒時設定,導通確認,起爆を行う技術を考案し,実用化した。トンネル内には建設機械等の発する様々な電気的ノイズや無線通信信号が存在するが,誤動作や不正操作が起こらないための工夫がなされており,安全性も十分に考慮されている。さらにこのシステムを鉱山の坑道で使用し,実用可能なことを発破試験により確認している。
無線雷管の開発は,トンネル発破作業の自動化・省人化とこれによる安全性・作業効率の飛躍的向上を可能にするものであり,建設業界及び火薬業界のさらなる発展も大いに期待される。
よって,火薬学会技術賞に値するものであり,今後も研究が継続,発展することを期待したい。
2012年3月 | 名古屋大学農学部応用生命科学科卒業 |
2014年3月 | 名古屋大学大学院生命農学研究科修士課程修了 |
2014年4月 | 日油株式会社入社 武豊工場研究開発部EXグループ配属 |
現在に至る |
2016年3月 | 山口大学工学部電気電子工学科卒業 |
2018年3月 | 山口大学大学院創成科学研究科修士課程修了 |
2018年4月 | 日油株式会社入社 武豊工場研究開発部EXグループ配属 |
現在に至る |
1996年3月 | 立教大学理学部物理学科卒業 |
1998年3月 | 東京工業大学大学院総合理工学研究科材料科学専攻博士前期課程修了 |
2001年3月 | 東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻博士後期課程修了(博士(理学)) |
2001年4月 | 東京工業大学応用セラミックス研究所博士研究員 |
2002年4月 | 日本油脂株式会社(現日油株式会社)入社 武豊工場研究開発部開発グループ(現EXグループ)配属 |
現在に至る |
1989年3月 | 静岡大学工学部合成化学科卒業 |
1989年4月 | 日本油脂株式会社(現日油株式会社)入社 武豊工場化薬研究所EBグループ配属 |
1995年9月 | 日本油脂株式会社(現日油株式会社)仙台営業所 |
1996年4月 | 株式会社ジャペックス東北支店(現東北営業部) |
2007年10月 | 株式会社ジャペックス東京本社 |
2017年4月 | 日油株式会社武豊工場研究開発部EXグループ |
2021年3月 | 株式会社ジャペックス関西営業部 |
現在に至る |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。