久保田裕二君は,地中火薬庫のようなコンクリート構造物の出口から放出される爆風特性の理論的研究に従事し,その成果を「Study of the blast wave ejected from the semi-sealed concrete structure」としてScience and Technology of Energetic Materials 誌に発表している。
爆風の伝播,ピークの過圧,空気中の衝撃は長年研究されているが,地中火薬庫からの爆風に関する研究は少なく,その爆風の影響について注目されている。また,地中火薬庫から放出される爆風やその強度については報告されているが,出口付近での爆風特性に関してはほとんど報告されていない状況である。今回,出口付近での爆風特性を調査するため,爆発実験と理論的検討を行った。
開口部のあるコンクリート構造物の中心で爆薬を起爆させ,開口部の出口で圧力測定を行った。また,AUTODYN を用いて,2 次元,3 次元の理論計算を行い,出口での圧力シミュレーションを行った。その実験の結果,不均一な爆風の分布が見られた。理論計算では圧力分布は3 次元の計算結果が,インパルスは2, 3 次元の計算結果が,実験結果と一致した。不均一な圧力分布の理由は理論計算により,出口の壁と地表面の反射によるものであり,構造物の影響を大きく受けることが判明した。
久保田裕二君の研究は,正確に調整された実験から得られた実験結果に対し,理論計算を着実に行った解析結果を分析しているものであり,今後の爆風圧解析への発展が期待される。この研究成果は高く評価され,当学会に大きく貢献するものであり,火薬学会奨励賞に値するものである。
2007年3月 | 九州大学工学部機械航空工学科卒業 |
2008年3月 | 九州大学大学院工学府航空宇宙工学専攻博士前期課程修了 |
2010年3月 | 九州大学大学院工学府航空宇宙工学専攻博士後期課程修了 |
2010年4月 | 日本工機株式会社入社研究開発部配属 |
2019年4月 | 同 特機営業部配属 |
現在に至る |
奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。