金子勝比古君は,京都大学において「鉱柱及び岩盤の変形性と安定性の評価法に関する研究」で博士号を取得され,熊本大学ならびに北海道大学において長きにわたり資源工学,岩盤工学及び爆破工学に関係する研究を実施した。
特に爆破工学の分野においては,これまで均質,連続体の対象物しかモデル化できなかった発破シミュレーションに,岩石力学の最新手法を導入することで不均質かつ不連続体が扱えるモデル化手法を確立した。これにより,発破に伴って生成,進展する亀裂の挙動及び亀裂と応力波の干渉メカニズムの解明とスムースブラスティング発破や粒度制御発破の高度化を通じて火薬業界の発展に貢献した。この学術的成果により1997年には火薬学会論文賞,2005年には資源・素材学会論文賞を受賞されている。
火薬学会においては,発破専門部会の運営に貢献された。「現場技術者のための発破工学ハンドブック」は,数少ない発破の専門書として,教育から実務に亘って広く活用されているが,その編集委員及び執筆者として発刊に尽力された。また,「日中韓発破技術者会議」の日本団長として,3国の発破技術の発展と交流にも尽力された。人材育成にも積極的に取り組まれ,火薬業界にも数多くの卒業生を輩出された。
金子勝比古君は火薬以外の分野でも広く活躍されており,北海道地方鉱山保安協議会会長や資源・素材学会会長を歴任されている。2011年には経済産業省より鉱山保安表彰を受賞されている。
以上のように,金子勝比古君は,爆破工学における研究成果と人材育成,火薬学会への貢献,及び社会貢献には顕著なものがあり,火薬学会学術賞に値する。
1974年3月 | 京都大学工学部資源工学科 卒業 |
1979年3月 | 京都大学大学院工学研究科資源工学専攻博士課程 単位取得退学 |
1980年4月 | 熊本大学工学部 助手 |
1986年7月 | 熊本大学工学部 助教授 |
1996年4月 | 熊本大学工学部 教授 |
1997年4月 | 北海道大学大学院工学研究科(工学研究院)教授 |
2008年4月〜2012年3月 | 北海道大学工学研究科・工学系教育研究センター長 兼務 |
2014年4月 | 同大学定年退職 北海道大学名誉教授 |
2012年4月 | (公財)北海道科学技術総合振興センター幌延地圏環境研究所 所長 |
2021年3月 | 同研究所退職 |
2015年6月 | 日鉄鉱業株式会社 取締役 |
2021年6月 | 同社退職 |
学術賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な業績を有し,且つ,若手研究者の教育・指導に著しく貢献した社員に授与しています。