山田隆宏君らの日本工機(株)では新規の防犯用具として,数m先の不審者に対し,網を展開し拘束する「ネットランチャー®」を開発した。
ネットランチャー®は4つの特徴がある。1つ目は非火薬のガス発生剤を使用していることから火薬類取締法の適用を受けないため,取り扱いに際しての制限が少ない。2つ目は従来サスマタを使用して不審者と対峙しなければならなかったが,網を飛翔させる機構のため不審者と距離を取って使用することができる。3つ目は網を飛翔させるための錘を8方向の放射状に飛ばすことで標的に直接錘が当たることがなく,安全性を考慮した設計としている。4つ目は高圧ガスではなく,ガス発生剤を使用することで,全重量を1kg以下としていること,また,作動時の反動もほとんど無いことから,女性など力のない人でも簡単に取り扱うことができる。
本製品の開発段階においては,重要な条件である網の展開性に関して錘の飛翔軌跡を評価,風の影響を評価するために風洞実験も行い確実に展開できる設計を行っている。
ネットランチャー®は非火薬組成のガス発生剤で網を展開させる装置であり,火薬類に該当しない利便さと飛翔体の安全性などから有効な防犯用具として認知度を高めており,幼稚園,小・中学校,病院,地域の防犯協会,警察など多くの機関で使用されている。
ネットランチャー®は火薬類の開発で得た知識を非火薬製品にも応用することで,新たな製品分野を切り開いた。2005年の上市以降,2007年,2008年に改良品の上市をし,防犯分野への貢献を継続させている。これらの実績は火薬の技術が新たな分野での貢献をした結果であり,火薬学会技術賞に値するものである。
2003年3月 | 岩手大学建設環境工学科 卒業 |
2003年4月 | 日本工機株式会社 入社 白河製造所 研究開発部 配属 |
2018年7月 | 研究開発部 開発グループチーフ |
現在に至る |
1985年3月 | 東海大学工学部工業化学科 卒業 |
1985年4月 | 日本工機株式会社 入社,白河製造所 研究開発部 配属 |
1997年3月 | 法政大学 博士(工学)学位取得 |
2001年1月 | 研究開発部 開発グループチーフ |
2010年6月 | 営業本部 汎用営業部長 |
2016年7月 | 研究開発部長 |
2021年6月 | 技師長 |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。