丹波高裕君は,爆風伝播の緩和を目的として様々な観点から実験的検討を行っている。水滴との相互作用による爆風伝播の緩和に関する実験では,爆心地に設置した爆薬周囲にスプリンクラーを配置することで水滴を供給し,水滴の散水量と散水面積を制御しながら爆風波の圧力波形を計測している。その結果,散水面積がピーク過圧の緩和に影響を与え,散水面積が小さいほど同じ散水量であっても爆風圧低減効果が得られることを示した。このことは水滴の空間密度が爆風を緩和するために重要な因子であることを示している。また,特定方向への爆風を緩和するために,標準的な爆風壁の上に追加の壁を設置し爆風緩和性能について実験的に検討している。追加壁には,I型とC型の鋼板製を使用している。I型壁との比較から,C型壁は爆発点付近において壁後方でピーク圧が低下するが,壁の反対側で爆風が強まること,また,C型壁を爆薬から遠ざけると壁背後の爆風圧は距離長さに応じて緩和されることを明らかとした。このことは,爆薬から離れた位置に追加壁としてC型壁を設置することで,特定方向の物体を爆風から保護する効果があることを示している。
これらの研究成果は,爆風伝播の緩和に関して有益な知見を示しており,爆発安全研究において貢献するだけでなく,爆発安全低減技術として有用なものである。よって,火薬学会に大きく貢献するものであり,火薬学会技術賞に値するものである。
2013年3月 | 名古屋大学工学部機械・航空工学科 卒業 |
2015年3月 | 名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 前期課程 修了 |
2018年5月 | 名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 後期課程 修了 |
2018年6月 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 任期付研究員 |
2022年10月 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員 |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。