保前友高君は,地下式/地中式火薬庫内での爆発で生じた爆風を低減する方法について,主に実験的手法を用いた研究を継続的に実施してきた。2020年以前は天然材料である水と砂を緩衝材に用いたが,2020年以降は工業製品であるガラズビーズと多孔質金属を緩衝材に利用して,より再現性および実用性のある低減方法について研究を行った。実験の爆風発生源に用いた小型電気雷管の再現性とTNT換算薬量についても検証し,これらの研究成果を以下の論文としてScience and Technology of Energetic Material誌に発表した。
緩衝材の設置方法の違いによる爆風低減効果について,爆風発生源の直下では水,直下を除く直管部では多孔質金属が優れていること,さらに多孔質金属は,細孔密度(pore density)が高い方が優れていることを明らかにした。特に,多孔質金属を壁面4面に設置した場合は,管外で計測される爆風のエネルギーは多孔質金属がない場合の5%程度にまで低減化されることを見出した。実験は100 mgスケールの小型電気雷管を供試火薬として用いたテーブルトップの系で行い,再現性が高い実験を複数回繰り返すことにより,詳細な知見を得ている。また,低減効果の定量化は,TNT換算薬量で評価しており,信頼性および汎用性の高い,すなわち利用価値の高い研究成果を提供している。
これらの研究成果は,地中式火薬庫の安全性の向上に寄与することはもちろんのこと,トンネル発破等の環境対策などにも利用できる可能性がある。
本研究は,火薬学会論文賞に値するものである。今後も研究が継続,発展し,火薬類の保安技術の向上及び環境保全の推進に貢献されることを期待したい。
1995年3月 | 大阪大学 基礎工学部 物性物理工学科 卒業 |
1997年3月 | 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物理系専攻 修士課程修了 |
2001年3月 | 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 物質科学創造専攻 博士課程修了 博士(工学) |
2001年4月 | 栄光学園高等学校 非常勤講師 |
2002年4月 | 防衛庁 技術研究本部 第1研究所 研究員 |
2005年4月 | 産業技術総合研究所 特別研究員 |
2007年10月 | 同 研究員 |
2009年5月 | 富山商船高等専門学校 商船学科 准教授 |
2009年10月 | 富山高等専門学校 商船学科 准教授 (統合に伴う校名変更) |
2014年4月 | 富山高等専門学校 商船学科 教授 |
論文賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な論文を論文誌に発表した社員に授与しています。