西脇洋佑君は,ガス発生剤などの火工品や煙火に使用される物質が水と共存するときの発熱反応に関する研究を精力的に進めてきた。塩基性硝酸銅(BCN)と硝酸グアニジン(GN)の混合物は,ガス発生剤として使用されているが,水の存在下での分解生成物を特定し,BCN 劣化の初期メカニズムを解明した。この研究成果は,GN/BCNを含む火工品組成物の劣化のメカニズムを解明し,安全な火工品の開発に役立つと期待される。また,火工品や煙火に使用されるMgでは劣化を防止するために安定剤が使用されるが,安定化効果と界面活性剤の炭化水素鎖の長さの関係を検討し,その結果,疎水性界面活性剤が過塩素酸アンモニウムと水による Mgの老化に対して効果的な安定剤であることを明らかにした。この研究成果は,Mg を含む火工品組成物の効果的な安定剤の開発に役立つと期待される。さらに,Mgと水との発熱反応について,粉末の粒径,比表面積と反応性の関係を定量的に解明した。この研究成果は,Mgの劣化問題や熱的危険性の評価に必要な情報となり,火薬類の安全な管理技術に大きく寄与するものである。
西脇洋佑君のこれらの研究成果は,ガス発生剤などの火工品や煙火に使用される物質の発熱反応の理解を深化させるものであり,経年劣化のメカニズムの解明と速度論データの集積は爆発安全工学に対する貢献として大きく評価でき,火薬業界の今後の発展に寄与するものであり,火薬学会論文賞に値する。
2011年3月 | 横浜国立大学理工学部化学・生命系学科 卒業 |
2017年3月 | 横浜国立大学 環境情報学府 博士課程前期 修了 |
2020年3月 | 横浜国立大学 環境情報学府 博士課程後期 修了 |
2020年4月 | (独)労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 任期付研究員 |
論文賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な論文を論文誌に発表した社員に授与しています。