2024年度火薬学会賞
技術賞 松本 幸太郎 君
「コンポジット推進薬燃焼表面におけるアルミニウム粒子の集塊抑制に関する研究」
松本幸太郎君は,固体ロケットモータの性能向上を目的とした実験的研究を行っている。受賞対象論文では,Al粒子の集塊粒径の低減のために,Mg-Al粒子を固体推進薬に添加し,固体推進薬の燃焼表面近傍を独自の光学計測系により可視化し,Al粒子の凝集・集塊過程の観察とMg-Al粒子による粒径の低減効果の調査を行っている。
固体ロケットモータにおいて,燃焼室内で集塊Al粒子が燃焼を完結するかは,モータの性能に大きく影響する。Al粒子は初期粒径の数倍から10倍程度になり,燃焼室内で燃え尽きることなく,ノズルから排出されることがあり,推進性能は低下する。このため,固体ロケットモータでのAl粒子の凝集・集塊の制御は,重要な課題となっている。本論文では,この課題を解決するために,固体推進薬にMg-Al粒子を添加し,その効果を評価している。
本論文では,チムニ式ストランドバーナを使用し,パルスレーザを組み込んだ光学可視化装置を構築し,固体推進薬の燃焼表面の撮影を行い,燃焼表面とAl粒子及びMg-Al粒子の挙動を詳細に観察している。その結果,燃焼表面上でAl粒子はAP粒子のまわりに付着して凝集していることがわかった。Mg-Al粒子は,この凝集過程を抑制し,Al粒子の凝集を抑制することができることを明らかにした。
これらの研究成果は,固体推進薬に関して重要なものであり,宇宙輸送における固体ロケットの運用に貢献するものである。したがって,火薬学会に大きく貢献するものであり,火薬学会技術賞に値するものである。
推薦論文
略歴
2015年3月 | 日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻 博士後期課程 修了 |
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2015年7月 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 研究開発員 |
2018年4月 | キヤノン電子株式会社 入社 |
2019年4月 | 日本大学生産工学部 機械工学科 助教 |
2023年4月 | 日本大学生産工学部 機械工学科 専任講師 |
技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。